2020年度 岩垂奨学会賞 受賞者発表

公益財団法人岩垂奨学会はこのたび、開催されました理事会において「2020年岩垂奨学会賞」を以下の方々に 贈呈することに決定いたしました。
受賞者には、賞状,賞牌、副賞100万円が贈られます。

2020年度 受賞者:2名

和泉究博士

宇宙航空研究開発機構(JAXA)        

宇宙科学研究所・国際トップヤングフェロー
平成20年度岩垂奨学会奨学金受領

戸田聡博士

金沢大学ナノ生命科学研究所

助教
平成22年度岩垂奨学会奨学金受領

和泉究博士

研究課題名 『 史上初の重力波直接観測に向けたレーザー干渉計の実験研究

研究内容及び研究成果の概要

 和泉究博士は,現代物理学において長きにわたり命題となっていた史上初の重力波直接検出を目標として、レーザー干渉計に関する実験研究を長年にわたり実施し、重力波初観測の達成という歴史的快挙に対して 本質的な貢献を果たした。重力波はアインシュタインが予言した、時空の歪みが微弱な波動として伝搬する 物理現象である。
  2015 年に,和泉博士が所属するLIGO(ライゴ) 計画チームが直接観測に初めて成功した。

 和泉博士はLIGOレーザーの稼働に必須であった、新しい精密基線長制御技術をプロトタイプ実験実証し、且つその技術のLIGOへの実導入において主導的な役割を果たした。
 また、LIGO観測所における実験チームの中心メンバーとして、低雑音かつ安定動作を確立するための主要な干渉計実験において、重要な役割を果たすなど、重力波初観測の達成に対して大きく貢献した。

戸田聡博士

研究課題名 『 細胞間相互作用の設計による組織構築の研究

研究内容及び研究成果の概要

 動物の発生過程では、細胞は相互作用しながら互いの挙動を巧みに制御することで、 複雑な組織構造を自律的に形成する。戸田聡博士は「胚形成などの複雑な組織形成過程において、細胞はどのような作用をしているか」という従来の生物学研究とは逆の発想で、「組織形成能のない細胞にどのような細胞間相互作用を構築すれば、組織構造が形成されるか」を検証した。

 これは、細胞が協調して多細胞構造を形成するための十分条件を明らかにする独創的なアプローチであります。戸田聡博士は、細胞が互いに遺伝子発現を制御する人工的な 細胞間コミュニケーションを構築することで、細胞を自発的に規則正しく配列させて組織構造を作製する ことに成功した。

 さらに、この手法で細胞種の増加や非対称構造の形成、物理的切断後の再生能といった動物の発生過程に共通する特徴を再現できることも見出した。
 これらは、細胞の配置や組織形態を制御する新たな手法として再生医療などへの応用が期待される成果です。