公益財団法人岩垂奨学会は、このたび開催されました理事会において「2026年度岩垂奨学会賞」を以下の方々に 贈呈することに決定いたしました。
受賞者には、賞状、賞牌、副賞100万円が贈られます。

2026年度 受賞者:2名 (五十音順)

井手上敏也 博士

東京大学物性研究所 准教授

2010年度 岩垂奨学会奨学金受領

小野寺桃子 博士

東京大学生産技術研究所 特任助教

2016年度、2018年度 岩垂奨学会奨学金受領

井出上敏也 博士

研究課題名 『 ナノ物質における量子力学的整流現象の開拓 』

研究内容及び研究成果の概要

 整流現象とは、一般に物質中において電流がある特定の方向へ流れやすく、その逆方向には流れにくいという現象です。従来は半導体の接合構造等で実現されてきましたが、最近は電流が流れる方向に接合構造が存在しない均質な物質においても結晶対称性の破れを反映した物質固有の整流応答が発現し得ることが分かってきており、その起源や応用可能性が大きな注目を集めています。井手上氏は、原子数層の物質やその界面、ナノチューブといったナノ物質の対称性の破れに着目することで、そのような物質固有の整流現象である非相反伝導現象(直流電場に対する整流応答)およびバルク光起電力効果(交流光電場に対する整流応答)の研究に取り組み、特異な電子状態や様々な量子自由度のダイナミクスとの関係性を明らかにすると同時に、ナノ物質を用いた新機能実現のための設計原理を提案することで、物質科学の新潮流を切り拓いてきました。

小野寺桃子 博士

研究課題名 『 原子層材料の剥離・転写・積層・三次元操作を可能にする作製基盤技術の開拓 』

研究内容及び研究成果の概要

 グラフェンなどの二次元材料は、原子一層から数層という極薄構造に由来する特異な物性を示し、次世代電子・光デバイスへの応用が期待されています。一方、その研究には、結晶から原子層を剥離し、目的の位置へ転写・積層する高度な試料作製技術が不可欠です。本研究では、従来は実験者の経験や市販材料の特性に依存していたこれらの工程を、高分子・粘着材料の物性に基づいて合理的に設計することを目指しました。PVCやCPVCを用いた乾式転写・反転・折り畳み技術を開発し、凹凸基板やMEMS上への転写、原子層材料の三次元操作を実現しました。さらに、粘着面の平坦性や支持体の剛性を最適化したFHBテープを開発し、WSe₂原子層を大面積かつ高収率で直接剥離することに成功しました。これらの成果により、原子層材料の作製を経験則から再現性の高い基盤技術へと発展させ、二次元材料研究の効率化と新たな物性・デバイス研究への展開に貢献しています。